2016.04.01更新

 家畜飼養学という科目があった。これは家畜に必要な栄養素に関する研究をする学問である。牧場での牛、豚、馬そして、鶏をも含む産業動物の栄養学に関する、実用的な学問である。その学問の基礎を踏まえ、様々な牧場では独自に栄養学的な工夫をし、その家畜にさまざまな付加価値を付与し、ブランド化に成功しているところもある。そのもっとも有名な例が、ビールを飲ませて肉を霜降りにした、神戸牛がある。豚のエサにある種のハーブを加えることで、その脂身に独特な甘味と旨みを加えることに成功したり、愛媛のタイの養殖業者がそのエサにミカンの皮を混ぜることにより鯛の刺身にほんのりと柑橘系の香りをつけることに成功した例がある。

 学生時代、家畜飼養学教室の同級生が、牛の飼料としてコーヒーの出し殻を利用できないかということを研究していた。コーヒーの出し殻というのはローストしたコーヒー豆を粉砕したものからコーヒーの香りと熱湯に溶出する成分をとった残りかすである。喫茶店では実際に大量の生ごみとして破棄されている。豆腐を作った後のおからは実際に飼料としてつかわれている。豆腐はかなりの圧力をかけてしぼりだした残りかすであるが、繊維やたんぱく豊富な飼料になっている。熱湯でろ過しただけのコーヒー豆にはそれ以上の栄養価が期待できるとして、近くの喫茶店に頼み込みコーヒー豆を研究室で飼っているホルスタイン種に飼料の10%を目安に投与した。その牛はコーヒーの出し殻を食べ始めても下痢することもなく、体調に変化なかった。ところが2~3週間すると牛乳の色がやや黄色から薄い茶色がかった色味となり、ほんのりコーヒーの香りがつき始め、一か月すぎるころには、色味は茶色というにはかなり薄いが、誰飲んでもコーヒーフレーバーを感じられる程度の珈琲牛乳が完成した。僕たちは、これを究極の珈琲牛乳と命名したが、未だ一般の牧場で商業ベースで生産されるという噂は聞かない。

 

 今日は平成28年4月1日である。

 

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投稿者: あぐり動物病院